（9348）ispaceは6日、米国の月面開発企業マグナ・ペトラと月面輸送分野で契約を締結した。契約金額は2200万ドル（約33億円）で、2027年に打ち上げを予定する月面着陸船に、マグナ・ペトラが開発した月面土壌分析装置を搭載し、月へ運搬する。

この提携は、ispaceが掲げる「月経済圏」構築の初期段階における重要な一歩となる。月面資源開発を進めるマグナ・ペトラにとって、実機による土壌データの取得は技術検証の基盤であり、ispaceにとってもペイロード輸送実績を積み上げる実証案件となる。

ispaceはすでにNASAや欧州機関との契約実績を持ち、今後のミッション2およびミッション3の開発を進めている。2025年半ばには次期月着陸ミッションを予定しており、今回の契約はその後の事業基盤強化につながる見通しだ。

一方で、同社の事業環境は依然として開発コストの負担が重い。直近の決算では、売上高約47億円に対し、営業損失約98億円、最終損失約119億円と赤字が続いている。研究開発費や人件費の増加が収益を圧迫しており、財務体質の改善が課題となっている。

資金調達面では、金融機関からの借入により開発資金の確保を進めており、長期的な技術開発の持続性を担保している。今回の契約によって、将来的な民間・政府案件の受注拡大への道が開かれる可能性もある。

株式市場では、月面探査ビジネスの実現性や収益化時期に注目が集まる。短期的には契約拡大を好感する動きが予想される一方で、実際の着陸成功とコスト管理能力が株価評価の焦点となる。中長期的には、同社が宇宙輸送サービスを収益事業として確立できるかが問われる局面にある。