対話型AI「ChatGPT」を開発する米OpenAIが公益法人（Public Benefit Corporation＝PBC）へ転換し、株式公開（IPO）への道を正式に開いた。米マイクロソフト（MSFT）は28日、同社と合意し、非営利母体「OpenAI財団」が経営を監督する新組織「OpenAIグループ」が発足したと発表した。評価額は5,000億ドル（約75兆円）に達し、AI企業として史上最大規模の上場候補として注目されている。

マイクロソフトは新法人の株式27％を保有し、持分評価額は1,350億ドル。これはこれまでの投資額138億ドルの約10倍に相当する。OpenAI財団は26％を保有し、残りは機関投資家・従業員に分配される見通し。PBC化により、非営利時代に存在した資本調達の制約が解消され、今後は一般企業のように市場から柔軟な資金を調達できる体制となった。

サム・アルトマンCEOはライブ配信で、「AI訓練・構築に必要な資金規模を考慮すれば、IPOが最も現実的な道筋だ」と明言した。実際、同社はAI開発の高速化に伴い、GPU調達・データセンター拡充・研究人材確保などの費用が急増しており、外部資本の導入は不可避とみられる。PBC化はその前提を整えるステップと位置づけられる。

マイクロソフトは同時に、OpenAIとの間で総額2,500億ドル規模のクラウド契約を締結。OpenAIは今後もAzureを利用し続けるが、マイクロソフトは優先交渉権を放棄し、OpenAIは他社クラウドや自社構築によるインフラ調達も可能になる。両社の提携関係は2032年まで延長され、AGI（汎用人工知能）実現時にもマイクロソフトが一定の利用権を保持する。

市場では、IPO実現時のOpenAIの時価総額が少なくとも5,000億ドル、強気シナリオでは1兆ドル超に達するとの見方もある。アルファベットやメタなど既存のAIプラットフォーマーを超える可能性が意識され、米テック株全体への波及も想定される。

一方で、非営利母体が経営監督権を保持する構造を維持しており、上場後も公益性を最優先とする姿勢を明確にしている。株主利益と社会的使命の両立がどこまで可能かが、上場後の最大の焦点となる。

資金調達と倫理的ガバナンスの両立を図るOpenAIのPBC化は、AI産業の資本構造そのものを変える転換点となった。IPOが実現すれば、AI経済圏の象徴的イベントとなるのは間違いない。

OpenAIのIPOは時期未定ながら、資金調達制約が解かれた点は構造的転換。マイクロソフトが27％を維持することで、クラウド収益およびAIモデル普及の恩恵を確実に享受できる。AIセクターの中長期上昇トレンドを支える材料だ。