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    TSMCAI時代へ投資拡大 5年後株価は最大2倍も視野に
    台湾積体電路製造TSMC)の今後5年間の成長シナリオをもとに、2030年頃の株価レンジを展望すると、同社が迎える転換期の輪郭が見えてくる。現在、TSMCの株価は1株あたり約302ドルで推移しており、過去12カ月ベースのPERはおおむね30倍前後と高水準だ。AIデータセンター向けの半導体需要が世界的に拡大する中で、同社への期待は依然として強く、今後の投資回収と技術優位性の維持が株価の方向性を左右するとみられる。

    5年後の株価を予測するにあたり、基本となるのは利益成長率と市場が与える評価倍率(PER)である。仮に現在の1株利益(EPS)を10ドルと仮定すると、保守的なシナリオでは年率8%の成長を前提に5年後のEPSは14.7ドル程度となる。この場合、PERを25倍とすれば株価は約370ドルと算定され、現状から約2割の上昇余地がある。

    一方、標準シナリオでは年率13%の成長を想定し、EPSは18.4ドル、PER28倍とすれば株価は515ドル前後に達する。これが最も現実味のあるベースラインであり、AIや高性能計算(HPC)用途の需要拡大を取り込みつつ、米国・日本・欧州での拠点稼働が順調に進むケースを描いている。

    さらに強気シナリオでは、年率18%成長を続けてEPSが22.9ドルに達し、PER30倍を維持できれば株価は約690ドルに達する可能性がある。AI半導体需要の爆発的拡大と、2ナノメートル世代の商用化成功が前提となるが、これはTSMCが世界のファウンドリ市場で圧倒的な地位を築く場合の姿である。

    一方で、PERの変動が予想に与える影響も無視できない。たとえば標準シナリオでも、市場評価が冷え込みPERが20倍まで低下すれば株価は370ドル程度にとどまる。逆に35倍まで拡大すれば640ドル台に跳ね上がる。つまり、利益成長だけでなく、投資家心理や金利動向による評価倍率の変化が株価レンジを大きく左右する。

    総じて、2030年時点での株価レンジは下限350〜400ドル、中心450〜600ドル、上限650〜700ドル程度が妥当な予想圏といえる。為替や金利、地政学リスクなどの外部要因を加味すれば振れ幅は広いものの、標準シナリオが実現すれば株価は5年で1.5〜2倍に拡大する計算となる。短期的には巨額投資によるコスト圧迫が続くが、長期的にはAI・HPC時代の中核企業として収益力を伸ばす展開が期待される。市場では「設備投資負担を乗り越え、技術覇権を維持できるか」が、今後のTSMC評価を決定づける最大の焦点となりそうだ。

株式情報更新 (10月25日)


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