英アームは、スマートフォンなどの民生機器向けに人工知能（AI）の処理を高速化する複数の半導体IPの提供を開始した。これにより、端末側でのAI演算能力が飛躍的に向上し、生成AIや画像認識、音声処理といった高度なアプリケーションをリアルタイムで実行できる環境が整う見通しだ。

新たに投入されたIP群は、CPU、GPU、NPU（ニューラルプロセッシングユニット）といった演算資源を最適に組み合わせ、電力効率と処理性能の両立を実現する設計が特徴となっている。特にモバイル端末に求められる低消費電力性能と高速演算を兼ね備えたことで、バッテリー駆動の制約を受けやすいスマートフォンやタブレットに適している。

背景には、生成AIアプリの普及やオンデバイスAI処理需要の拡大がある。これまでクラウド依存だった高度な処理を端末内でこなせるようになることで、通信遅延の低減やセキュリティ強化につながる。アームは世界の半導体設計で圧倒的なシェアを持ち、スマホ向けチップ市場では事実上の標準となっている。今回のIP展開は、アップルやクアルコムなど主要半導体メーカーによる採用が見込まれ、AIエコシステム全体の拡大を後押しする。