（AMZN）アマゾン・ドット・コムの2025年7〜9月期（第3四半期）決算は、生成AI需要の拡大を背景にクラウド部門「アマゾン・ウェブ・サービス（AWS）」が大幅に回復し、全体の業績を押し上げた。AWS売上高は前年同期比20％増の330億ドルと、2022年末以来の高い伸び率を示した。アナリスト予想（18％増）を上回り、同社が競合に押されているとの懸念を払拭した。発表後の時間外取引で株価は約12％上昇した。

全社売上高は前年同期比13％増の1802億ドル（約28兆円）で、市場予想（1778億ドル）を上回った。純利益に相当する1株当たり利益（EPS）は1.95ドルと、予想の1.56ドルを大幅に上回る好決算だった。広告事業の売上高は23.5％増の177億ドル、北米部門は11％増の1062億ドル、国際部門も14％増の409億ドルと、消費支出の持ち直しが寄与した。

一方、営業利益は特別費用の影響で174億ドル（営業利益率9.7％）にとどまったが、費用を除くベースでは217億ドル（同12.0％）と堅調だった。営業キャッシュフローは16％増の1307億ドルとなる一方、設備投資増加によりフリーキャッシュフローは147億ドルと前年の477億ドルから減少した。

AWSではAI学習向け自社開発チップ「Trainium2」の採用が急拡大し、前四半期比150％の成長を記録。Anthropicの「Claude」シリーズ構築に向け、約50万個のTrainium2を搭載する「Project Rainier」を始動した。さらに、NVIDIAの最新「Grace Blackwell」Superchipを採用した新型EC2サーバー「P6e-GB200 UltraServers」も発表し、AI向けデータセンター投資を一段と拡大している。

同社は次四半期（10〜12月期）の売上高を2,095億ドル前後と見込み、市場予想（2,081億ドル）を上回る見通しを示した。生成AIの導入拡大とクラウド基盤の強化を背景に、今後も利益率の改善を目指す構えだ。市場では「AIインフラ投資の先行でAWSの競争優位が回復しつつある」との見方が強まっている。