英調査会社IDTechExはこのほど、ヒューマノイドロボット市場が2035年には300億ドル規模に成長するとの予測を発表した。特に、自動車産業と物流業界を中心に導入が進むと見られており、生産性向上や人手不足解消を狙った本格的な実用フェーズに移行する動きが強まっている。

ヒューマノイドロボットは、人間に近い外見と関節構造を持ち、工場や倉庫での単純作業だけでなく、柔軟な動作や応対能力が求められる場面にも適応できるのが特徴だ。これまで研究開発や展示用途にとどまっていたが、近年ではAIの高度化とセンサー技術の進展により、コストや安全性、操作性の面でも実用水準に達しつつある。

IDTechExによると、初期段階での採用が見込まれるのは、車両の組み立てラインやピッキング作業など、反復性が高く、精度と継続力が求められる工程だ。トヨタ、フォード、BMWといったグローバルな自動車メーカーが先行導入を検討しており、物流分野では倉庫内での品出しや搬送業務への応用が想定されている。

また、中国や韓国では、ロボット国家戦略のもとでヒューマノイドの開発競争が過熱しており、日本企業も部品供給や制御ソフト開発での関与が期待されている。特に、精密モーターや減速機、バッテリー関連技術を持つ企業には追い風となりそうだ。

同社は、2030年までに量産体制が確立し、2035年には年間出荷台数が100万体を超えると予測している。人と協働する次世代ロボットとして、製造業だけでなく介護やサービス業などへの波及効果も視野に入ってきた。