米議会の超党派「米中経済安全保障調査委員会」が公表した年次報告書で、AIを巡る中国との競争激化を背景に、「AI版マンハッタン計画」の立ち上げを提言した。この計画は、人間並みの知能を持つ汎用AI（AGI）開発を官民協力で進めることを目指している。この提言の背景には、AIが世界の権力バランスを変える可能性があるという認識がある。

AIの進化が加速する中、軍事分野における利用が注目されている。この計画は、第二次世界大戦時の原子爆弾開発プロジェクト「マンハッタン計画」になぞらえ、AIを国家の防衛力向上や軍事的優位性確保に活用しようとする動きを指している。特に、アメリカを中心とした国々では、AIを利用した兵器システム、サイバー防衛、監視技術が開発の焦点になっている。

オープンAIのCEOであるサム・アルトマンは、AIの発展において責任ある利用を強調しているが、軍事利用に関しては慎重な立場だ。一方で、アルトマンが推進する技術が、間接的に軍事転用される可能性は否定できない。オープンAIは最近、防衛技術スタートアップのアンドゥリル・インダストリーズと提携し、米軍向け対ドローン防衛システムに技術を提供することで合意した。

一方、イーロン・マスクは、AIが人類存亡のリスクを伴う可能性を繰り返し警告している。特に、AI兵器の拡散が制御不能になることを懸念し、各国にAIの軍事利用を制限する国際的な規制を呼びかけている。しかし、彼自身が設立した企業（TeslaやSpaceX）が提供する技術が、AIを活用した軍事利用の基盤として見なされている側面もある。

「新マンハッタン計画」は、特に米中間のテクノロジー競争を背景にしている。中国はAIを利用した軍事システムの開発に巨額の資金を投入しており、米国もこれに対抗する形で、民間企業と軍事産業の連携を進めている。サム・アルトマンやイーロン・マスクのような技術リーダーの動向は、こうした競争に大きな影響を与えると見られている。