注目銘柄

    注目銘柄 2025/11/19 08:03
    (8002) 丸紅 非資源事業が牽引、資産入れ替えも加速/S&Pが格上げ「A-」/アウトルック「安定的」
    (8002)丸紅が信用格付け会社S&Pから「A-」に格上げされ、アウトルックは「安定的」とされた。背景には、非資源事業の収益強化と資産入れ替えの進展により、今後2年程度にわたり最終利益が安定して5,000億円規模で推移するという評価がある。同社は、食料・アグリ、電力卸売・小売、金融・リースといった既存の強みを持つ領域への集中投資を通じ、年間3,000億円超の安定利益を創出できる体制を整えつつある。

    さらに、収益性の低い資産売却を積極的に進め、一定規模の売却益を計上する方針だ。資源価格変動の影響を抑えるため、新規の高リスク資源投資を大幅に縮小し、既存資産の拡張に限定する姿勢を維持している。2020年3月期に米国穀物事業などで巨額損失を計上した反省から、リスク管理体制も強化され、損失発生リスクは大幅に抑えられた。

    2025年3月期決算では、売上高7兆7,90億円、営業利益2,723億円、経常利益6,292億円、当期純利益5,029億円となり、過去2番目の高水準となった。食料・アグリ事業が引き続き堅調で、資源事業の減益を補った。第一生命ホールディングスとの国内不動産事業統合による評価益も寄与した。2026年3月期は当期利益5,100億円を計画し、安定的な成長を見込む。

    財務面では、自己資本額は約3.8兆円と大手総合商社の中ではやや小さいが、数年間で大きく積み増されてきた。S&Pは、修正後資本が「A」ストレスシナリオで必要となるリスクベース自己資本を上回る水準で推移すると見ており、財務の安定性は格付けに見合う十分な水準と判断している。株主還元についても抑制的な運営を続け、フリーキャッシュフローの黒字維持を重視している点は格付け要因としてプラスに作用した。

    市場では、非資源事業中心へのポートフォリオ転換が一定の成果を上げたことで、収益構造の“厚み”が増してきた点を評価する声がある。一方で、事業規模や利益規模では上位総合商社に比べ見劣りする構造的な課題は残る。今後は非資源領域の成長度合いと資産入れ替えのスピードが競争力を左右する局面に入っている。

    総じて、丸紅は安定成長への確度を高めつつあり、格付け改善はその一つの象徴といえる。非資源比率の上昇と財務管理の精度向上により、総合商社セクター内で存在感を一段引き上げる可能性がある。

株式情報更新 (11月28日)


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