クアルコムは、主力半導体のCPUアーキテクチャを英アームの最新世代「Armv9」に切り替えた。競合するアップルやメディアテックに対抗する狙いで、生成AIや対話型AIの処理性能を大幅に向上させる構造を採用した。V9は前世代から演算効率を高め、AI処理に最適化された最新設計で、スマートフォンやパソコン向け新製品に順次搭載される見通しだ。

今回の採用は、クアルコムにとってAI分野での巻き返しに向けた技術的転換点となる。半導体市場では、エヌビディアがGPUで圧倒的な存在感を示す一方、クアルコムはモバイル向けCPUとAIアクセラレーターを組み合わせ、低消費電力領域での優位確立を狙う。今後はPC向けSnapdragonシリーズにもV9を展開し、アップルシリコンとの競争が一段と激化する見通しだ。

一方、アームとクアルコムはライセンス契約を巡る訴訟で対立中。クアルコム子会社ヌビアが設計したCPUがアームとの契約を遵守しているかが争点で、今年デラウェア州連邦地裁の陪審員はクアルコム側の正当性を認めた。これに対しアームは、判決を不服として控訴を表明しており、関係修復はなお見通せない。

アームにとってもV9採用は収益拡大につながる重要契機であり、両社の協業と訴訟の行方は、AI半導体市場全体の勢力図を左右する可能性がある。市場では「法廷闘争を超えた技術提携への再構築が鍵になる」との見方が出ている。