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    炭素戦略③アンモニア発電
    国連のグテレス事務総長は、OECD加盟国に対して2030年までに段階的に石炭火力発電の廃止を求め、G7には6月のサミットまでに具体的な廃止計画の提示を求めた。安倍政権時代には、二酸化炭素排出や石炭消費量が少ない「超臨界圧石炭火力発電(USC)」が推進されていたが、状況は一変する。IGCC(石炭ガス化複合発電)も選択肢ではなくなる。日本の石炭火力発電からは東芝と日立が撤退し、三菱パワーに集約されている。

    切り札の水素発電では間に合わず、アンモニア発電の導入を急ぐことになる。国内最大の火力発電会社JERA(ジェラ)は国内に27の火力発電所をもち、主力は天然ガス火力だが、石炭火力も約1000万キロワットあり、うち9割は政府の石炭火力廃止計画の対象外となっている超臨界圧石炭火力発電(USC)だ。これも生き残れるはずもない。

    三菱パワー、川崎重工、IHIは当然アンモニア発電に照準を合わせると見られる。これまでは石炭火力にアンモニアを20%程度混焼する計画はあるが、三菱パワーは100%アンモニアの実証事件に取り組む。出力が4万キロワット級で2025年以降の実用化を目指しているが、サミットまでに計画を見直す必要もありそうだ。

    二酸化炭素の排出削減に消極的な企業は、世界の機関投資家から投資が撤退され、運用対象から外される動きが顕在化している。明確に排出ゼロを目指す企業に投資するマネーは、世界の運用資産の2割にあたる2000兆円と言われるが、この比率は高まるばかりとなる。トランプ政権は石炭産業の復活を掲げるなど、脱炭素に極めて消極的だったが、バイデン政権の誕生で世界は同じ方向を向くことになった。

    日本は原発が稼働しておらず、年間約11億4000万トンの二酸化炭素を排出しているワースト国だ。温室効果ガス排出量ランキングでは(5401)日本製鉄や(5411)ジェイ エフ イー HDなどの鉄鋼株、電力会社がズラリと並ぶ。海運株や空運株も同様で、このような重厚長大産業は世界の投資マネーから見放されるリスクがある。

    政府は「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ」を目標に掲げ、温室効果ガスの排出抑制に取り組んでいる大企業は88.8%と高い。ところが「2050年カーボンニュートラル」目標を達成可能とする企業は15.8%に過ぎず、達成困難が43.4%、達成できないが17.9%に上っている。

    アンモニアは燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンエネルギーとされる。アンモニア石炭を混ぜて発電に使う技術の実用化も進められており、石炭火力のCO2排出量の削減が期待される。アンモニア水から水素を製造する技術開発も進む。

    経済産業省はアンモニアの海外調達を強化する方針で、2030年に天然ガスを下回る価格水準での供給を目指す。再生可能エネルギーから取り出す「グリーンアンモニア」の生産能力は、30年ごろに年300万-500万トンになる見込みだが、高コストのため、価格を半分程度に抑える必要がある。経産省の目標は30年の国内消費量が300万トン、50年が3000万トン。

    経産省は次期エネルギー基本計画で、火力発電燃料として利用増が想定されるアンモニアの安定確保を重点課題とする。アンモニアは、米国やオーストラリアが主要な生産国だが、原料となる天然ガスの埋蔵量が豊富な中東のUAEとも協力する。経産省は総合商社やエネルギー関連企業で構成する協議会を設立している。国際協力銀行は温暖化ガスの排出量が多い石炭火力発電への新規融資を見送り、より環境負荷の少ない高性能発電技術の開発を促進する。

    (1964)中外炉工業は、化石燃料を使わずアンモニアのみを燃料に安定燃焼させる技術を開発した。二酸化炭素の排出を抑えるアンモニア燃料の熱処理炉を開発し、2025年の実用化を目指す。工業用アンモニアバーナーも大阪大学と共同開発中で、日本のエネルギーの17%を消費する工業炉では脱炭素燃焼バーナの開発が必要で、再生可能エネルギーの利用が不可欠となる。中外炉工業はトヨタと共同で、工業利用を目的とした世界初の水素バーナーを開発し、トヨタ本社工場の鍛造ラインに導入している。

    (6378)木村化工機と(6901)澤藤電機は、2019年11月に岐阜大学と低濃度アンモニア水から高純度水素を製造し、燃料電池で発電することに成功したと発表している。これにより、消費電力および二酸化炭素排出量が約83%減、NOxゼロのアンモニア処理システムの成果が得られ、消費電力・二酸化炭素排出量ゼロ、NOxゼロのアンモニア処理システムの開発が可能となった。

    実証装置では低濃度アンモニアを木村化工機の汎用型ヒートポンプによる省エネ型アンモニア回収装置に集め、澤藤電機と岐阜大学が開発したプラズマメンブレンリアクター水素製造装置で、水素を取り出し燃料電池で発電した。

    (4005)住友化学は、水素を運ぶアンモニアの抜本的製法転換に向け触媒開発を目指す方針を明らかにしている。

    (4208)宇部興産は、アンモニアを原料とする当社ナイロン・ファイン事業関連製品を生産しており、2020年10月1日には100%子会社の宇部アンモニア工業を吸収合併した。宇部アンモニア工業は、主に液体アンモニアを製造しており、宇部興産はアンモニア事業を強化する。

    (9501)東京電力と(9502)中部電力が出資する国内最大の発電業者「JERA」は、二酸化炭素を排出しないアンモニアを自社生産し、2040年代にアンモニアだけを燃料とする発電設備を稼働させる計画。21年度には石炭アンモニアの混合燃料の実証実験を開始する。IHIも参画する模様。(7013)IHIはサウジアラムコが推進する「ブルーアンモニア」のサプライチェーン実証試験にも協力している。

    (7011)三菱重工業の子会社「三菱パワー」は出力が4万キロワット級のガスタービンの発電装置で、燃料を100%アンモニアにしても窒素酸化物を抑えることができるよう装置を改良し、2025年以降の実用化を目指す。

株式情報更新 (4月22日)


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