株テーマ:アルツハイマーの関連銘柄
エーザイや塩野義製薬などは、認知症の悪化を抑える新薬の開発を進める。病気のメカニズムが難しく実用化が難航している。原因タンパク質を減らす手法などで2020年以降の実用化を目指す。世界の認知症患者数は2025年に6000万人強に達する見通し。WHOは世界のアルツハイマー病患者数が2019年に5520万人、2050年には2.5倍の1億3900万人になる見通しを示している。認知症患者に対応する医療や介護の費用が増え、高齢化が進む国に共通する社会問題となっている。
ファンペップは、2023年11月にアルツハイマー病ワクチンの研究を開始すると発表した。大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄付講座との共同研究により、タウ伝播を抑制する抗リン酸化タウ抗体誘導ペプチドの研究開発を行い、アルツハイマー病に対する新規根本治療薬開発を目指す。
エーザイが自宅で患者が注射できる薬剤を新たに開発すると報じられた。2023年度中に米国で承認申請を目指すもよう。
エーザイは、2022年9月28日にアルツハイマー治療薬「レカネマブ」でアルツハイマーによる軽度認知障害を対象としたグローバル臨床第3相試験において、主要評価項目と全ての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果を持って達成し、良好なトップライン結果を取得したと発表した。2022年度中の米国におけるフル承認申請と日本、欧州における販売承認申請を目指す。2023年6月10日に、米FDAの諮問委員会が臨床第3相 Clarity AD 検証試験結果が臨床上のベネフィットを示すエビデンスがあることを全会一致で支持したと発表した。2023年7月に米FDAからフル承認を取得したと発表した。
エーザイが米バイオジェンと共同開発しているアルツハイマー治療薬「アデュカヌマブ(アデュヘルム)」は、2021年6月7日に米FDAが承認した。承認後もバイオジェンに追加治験を求める条件付き承認となっている。エーザイは日本と、中国・韓国を除くアジアでの販売で収入の全てと利益の8割を受け取る権利を持つ。年間売上高は48億ドル(約5200億円)に達するとの試算も出ている。
一方、2021年12月20日には欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会(CHMP)が販売承認申請について否定的見解を採択。2021年12月23日には日本の厚生労働省は継続審議とした。脳内の異常タンパク質「アミロイドベータ」の減少と進行を抑える効果の関係性が明らかでない点や、投与した人の一部で見られた脳の腫れや出血といった副作用なども踏まえて判断した。
FDAはイーライリリーの「ドナネマブ」も画期的治療薬に指定した。アルツハイマー病に対する作用は「アミロイドβ(ベータ)」を除去するという点で同じ。一部では「ドナネマブ」はエーザイの「アデュカヌマブ」より、好結果が出ているとされており、イーライリリーは年内に製造販売申請する計画のようだ。
富士フイルム HDは、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」の米国第2層臨床試験で罹病期間の短い患者群の認知機能低下の進行を大幅に抑制するなど、良好な結果を得たと発表した。「T-817MA」がグループの富山化学が開発したもので、脳脊髄液中のリン酸化タウの減少、脳内の海馬の萎縮抑制で画期的な成果を挙げている。FDA(米食品医薬品局)と第3層臨床試験に向けた協議を始める。
塩野義製薬は、認知機能改善候補「BPN14770」を開発する米テトラと戦略提携。テトラの「BPN14770」は記憶形成に関わるPDE4Dを標的とするもので、これまで開発されてきたPDE4D阻害薬でみられる嘔気等の副作用を回避しつつ、認知機能を改善することが期待される。また、非臨床試験でアルツハイマー型認知症や脆弱X症候群の動物モデルで認知機能障害への改善効果が確認されている。米国でフェース2試験が実施されており、2020年3月中には結果速報が得られる見込み。
そーせいグループの子会社「ヘプタレス」と、提携先の「アラガン」が、アルツハイマー病の治療薬「HTL16878」を2017年8月に第1相臨床試験で最初の被験者に投与した。第1相臨床試験の開始に伴いへプラレスは1500万ドル(約165億円)のマイルストーンを受領する。第2四半期の売上収益に計上される。HTL16878はアルツハイマー病等に関連した神経行動学的症状の治療薬で、経口投与が可能。ヘプタレスが独自の構造ベースドラッグデザイン技術で設計し、英国では106人の健常者へ投与し、安全性や有効性を評価する。
サッポロは京大と共同で、ビールの主原料となるホップがアルツハイマー病を抑制するとの研究結果を発表した。
・富士フイルム T-817MA
欧州 第2相臨床試験を開始
米国 第2相臨床試験 罹病期間の短い患者群の認知機能進行を大幅に抑制
・認可中の認知症治療薬
アリセプト(エーザイ)
レミニール(武田薬品工業)
イクセロンパッチ(ノバルティスファーマ)
リバスタッチ(小野薬品工業)
メマリー(第一三共)
・開発中認知症治療薬候補
BPN14770(塩野義製薬)
ブレクスピプラゾール(大塚 HD)
・関連銘柄
4564オンコセラピー・サイエンス
協和キリンにアルツハイマー対象の抗体医薬を導出
4586メドレックス
アルツハイマー治療テープ剤の治験
2158FRONTEO
会話型認知症診断支援AI
FRONTEOは、AI医療機器「会話型 認知症診断支援AIプログラム」の米国・欧州・中国・韓国における独占的開発・販売契約を、慶應義塾と締結した。
・アミロイドベータ
6869シスメックス
シスメックスとエーザイは、2020年11月のアルツハイマー病臨床試験会議で、血液による簡便なアルツハイマー病診断法の創出に向けた学術報告を行っており、アルツハイマー関連として物色されているようだ。シスメックスとエーザイは2016年2月に、認知症領域に関する新たな診断薬創出に向けた非独占的包括契約を締結していた。血液による簡便なアルツハイマー病診断法の創出として、シスメックスの全自動免疫測定装置「HISCL」を用いて測定した血漿中のアミロイドベータを予測性能に役立てる。
7701島津製作所
血中のアミロイドベータを測定する「アミロイドMS CL」が2020年12月に医療機器承認を受けている。
エーザイと米バイオジェンが共同開発するアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が、2023年1月米食品医薬品局(FDA)から迅速承認された。3月までに完全承認に向けた申請を提出する。米国での販売価格について、患者1人あたり年2万6500ドル(約350万円)に設定した。今後、日本で承認された場合は、公的保険診療になることが見込まれる。高額療養費制度で、70歳以上の一般所得層(年収156万~約370万円)の場合は年14万4000円が上限になる。